最近、友人から今年の春運について質問を受けました。2023年以降、毎年の春運は2019年以前とは大きく異なっています。特に変化が顕著なのは、旅客層の変化です。実は、硬直的な帰省客は減少してきているのです。
中国の休暇の特徴は、「集中休暇」という点にあります。これは中国経済の「ライン作業型」の特徴に起因しており、長い間中国経済は東南沿海の製造業に依存していました。この製造業は、作業工程が順番に繋がっているため、個別に休暇を取ると工場は冗員に悩まされるか、全員が休めないという問題が発生するのです。
また、春節はちょうど製造業の閑散期であり、12月に加班（残業）を終えた後、工場が休暇に入るタイミングとなります。このため、製造業に従事する人々は春節休暇を楽しむことができました。
しかし、現在中国の経済基盤は大きく変化しており、主に製造業ではなく、もっと柔軟な雇用形態へと移行しています。例えば、現在では「ネット予約タクシー」「宅配便」「デリバリー」など、非常にフレキシブルな働き方が一般的になっています。これらの仕事は「並行作業」であり、休暇の取り方や休みを柔軟に調整できる点が大きな特徴です。
さらに、社会構造の変化も影響しています。60年代、70年代生まれの人々は、独身ではない子どもたちを持つ家庭が多く、90年代や00年代には外で働く人々が増えており、親への帰省が必要でした。しかし現在では、90年代や00年代生まれの独身一人っ子が主力となり、家族の構成が変わりました。独身一人っ子を持つ両親は、経済的に余裕があれば旅行に出かけることもありますし、余裕がない場合は、子どもが帰省して両親を支えるケースもあります。
このように、今では独身一人っ子が主役となっており、親との集まりも事前に計画さえすれば問題ないため、特に春節に帰省しなくても問題ないという現象が起きています。
また、フレキシブルな働き方と分散した家庭形態により、交通需要にも変化が見られます。過去10年と比べ、帰省のプレッシャーは大きく減少しました。2015年では、鉄道を利用する旅客は平均500km以上移動していましたが、現在ではその距離は400kmに減少しました。航空旅客はさらに遠く、2015年の平均距離は1443kmでしたが、現在は1556kmです。
さらに、高速鉄道利用者はどんどん近くの距離を移動するようになり、飛行機利用者はますます遠方を飛ぶ傾向にあります。これにより、伝統的な「800～1200km圏内」の範囲（例えば珠三角から貴州、湖南、長三角から安徽、河南への帰省）がズレてきています。
これまでの春運では、主に一線都市から二線、三線都市への人の流れが集中し、節後に再び逆流する形が一般的でした。しかし、最近では「全国一律の流れ」が見られ、二線、三線都市同士の移動や旅行も増えています。これにより、需要の集中度が下がり、供給過多による価格上昇が緩和される傾向が見られます。
現在、春運の旅行者層は、帰省の需要から観光需要へとシフトしてきています。例えば、以前は「観光シーズン」のオフピークだった時期でも、今では観光需要によって賑わっています。連休を2回の短期旅行に分けて楽しむことが可能となったため、旅行需要は増加しています。
しかし、これが運輸業者にとっては一概に良いニュースとは言えません。選択肢が増えることで、供給も増え、旅客の選択肢が広がります。短距離、長距離、国内外を問わず、旅客の選択肢は増え、価格の競争が激しくなります。
旅行者が帰省の必要性を感じなくなり、選択肢が増えることで、旅行に行く場所が増えるとともに、空席が生まれることがあります。これが、なぜ春節直前に機票やホテルの価格が下がる原因なのです。探親の需要は必ずしも急いで予約しなければならず、旅行の需要は比較的柔軟であるため、旅行者が価格が下がるのを待つことができます。
長期的には、帰省の需要もまた、最後の最後で最安値のチケットやホテルを得るために、観光需要と一緒に予約することが多くなるでしょう。
現在の春運で最も大きな変化は、雇用構造の変化によって、旅行者の時間的選択肢が増えたことと、家庭構造の変化によって、旅行者がどこへ行くかの選択肢も広がったことです。この変化は、春運市場の競争環境に大きな影響を与えています。
旅行者の視点でも、航空会社やホテル、OTA（オンライン旅行代理店）の視点でも、この変化を注視する必要があります。
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