「ウェットリース」と「ドライリース」― 航空機の2つのリース方式

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インターネット上で「Vietjet Air(ベトジェットエア)」のロゴが入った成都航空のC909型機の写真が話題になりました。調べてみると、この2機(B-652GとB-656E)はウェットリース契約のもと、ベトジェットエアに貸し出される予定とのことです。おそらく、ベトナム市場でのC909の性能や信頼性を評価し、将来的な導入を検討するための措置と考えられます。

では、「ウェットリース」とは一体どのようなリース方式なのでしょうか?


ウェットリース(Wet Lease)とは?

ウェットリースとは、航空機の本体に加え、機体の整備、パイロットや客室乗務員、保険などを含めてリースする契約形態です。リース期間は比較的短く、1か月から最長でも2年ほどのケースが多く、航空会社の運航状況や市場の需要に応じて柔軟に調整できるのが特徴です。

ウェットリースが活用されるケース

  • シーズンによる需要変動の対応
    • 例えば、ヨーロッパの航空会社は夏の旅行シーズンに向けて一時的に機材を増やし、オフシーズンになると余剰機材を他の航空会社に貸し出します。
    • ノルウェー航空(Norwegian Air Shuttle)などは、冬場に余った機材をリースに出すことでコストを抑える戦略を取っています。
  • 新規路線の試験運用
    • 航空会社が新しい機種を導入する前に、その国の運航環境に適しているかをテストするため、一時的にウェットリースを利用するケースもあります。
  • 緊急時の運航維持
    • 機材の故障や、予期せぬ需要増加に対応するため、短期間だけウェットリースを活用することがあります。

このため、ウェットリースを専門に扱う航空会社も存在し、代表的な例として**Hi Fly(ハイフライ)**が挙げられます。同社は自社の機材を世界中の航空会社に短期間リースすることで収益を得ています。

長期ウェットリースの事例

ウェットリースは短期利用が一般的ですが、例外的に長期間の契約が結ばれるケースもあります。

例えば、フィンエアー(Finnair)は、ロシア・ウクライナ戦争の影響で東アジア路線の運航が困難になり、2機のA330(OH-LTS/OH-LTR)を2023年からカンタス航空(Qantas)にウェットリースしています。現在、この2機は**シドニー=シンガポール(QF291/2)、シドニー=バンコク(QF293/4)**の運航に使用されており、このリース契約は2028年まで続く可能性があります。


ドライリース(Dry Lease)とは?

ウェットリースとは対照的に、ドライリースは航空機本体のみを貸し出し、整備・運航は借り手(航空会社)が行う方式です。通常、契約期間は2年以上と長期で、機材の所有に近い形となります。

ドライリースのメリット

  • 新規航空会社のコスト削減
    • 新たに航空会社を設立する際、機材を購入するよりもリースする方が初期費用を大幅に抑えられます。
    • 例えば、エアバスA320のカタログ価格は約1億ドル(約150億円)であり、ワイドボディ機(大型機)になると数百億円規模になります。新規航空会社がこれらの機材を一括購入するのは現実的ではないため、ドライリースを活用することで迅速に事業を展開できます。
  • 市場状況に応じた機材の調整
    • 業績が好調なときはリース機を増やし、不況時には契約満了に合わせて機材を減らすことで、柔軟な経営が可能になります。
    • 例えば、台湾のスターラックス航空(Starlux Airlines)は、新規参入時に多くの機材をリースで確保し、機材の納期が長いA320シリーズを効率的に導入しました。
  • 人気機種の納期回避
    • A320シリーズは現在15年以上の注文残があり、新規購入では納期が非常に長いため、リース市場からの調達が有効な手段となっています。

ドライリース機の特徴

基本的にリース機は借り手の航空会社の塗装に変更されますが、例外もあります。例えば、タイ・ベトジェットエア(Thai Vietjet Air)がWOW air(アイスランドのLCC)からリースしたHS-VKMは、2019年の導入以降もWOW airの塗装をそのまま使用しています。


航空機リース市場の現状と主要企業

航空機リースの市場は拡大を続けており、現在では世界の航空機の半数以上がリース機材となっています。これに伴い、航空機リース会社も増え、多くの金融機関や航空機メーカーが参入しています。

主要な航空機リース会社

  • 中銀航空租賃(BOC Aviation)(中国銀行グループ)
  • Avolon(渤海租賃傘下)
  • 工行租賃(ICBC Leasing)(中国工商銀行グループ)
  • GE Capital Aviation Services(GECAS)(ゼネラル・エレクトリック傘下)
  • Air Lease Corporation(ALC)(米国の大手リース会社)

また、エアバスやボーイングといった航空機メーカーも、自社でリース部門を持ち、航空会社向けに機材を提供しています。


まとめ:ウェットリースとドライリースの違い

ウェットリース(Wet Lease)ドライリース(Dry Lease)
契約期間短期間(1か月~2年程度)長期間(2年以上)
機材提供航空機 + 乗員 + 整備 + 保険航空機のみ
費用負担すべて貸し手(リース会社)が負担借り手(航空会社)が負担
用途短期の増便、新路線の試験運用、緊急時の代替機材長期の機材運用、新規航空会社の導入機材

航空業界では、これらのリース方式を柔軟に活用しながら、運航の最適化を図っています。今後も、航空機リース市場の動向に注目が集まりそうです。

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