中国の浙江省は、中国本土で最も面積の小さい省であり、その広さは約10万平方キロメートルです。これより小さいのは直轄市である重慶だけ。韓国の国土面積は浙江省とほぼ同じですが、私たちの感覚では、この規模の地域なら国内移動に飛行機は不要なはず。しかし、韓国では国内線が非常に発達しており、多くの路線が運行され、便数も非常に多いのです。
この疑問が浮かんだきっかけは、元旦前に韓国で発生した航空事故でした。事故は韓国南部の全羅南道で発生し、事故を起こしたのは「済州航空」という航空会社でした。一部の人はこの便を済州島と本土を結ぶ国内線だと勘違いしましたが、実際にはタイ・バンコクからの国際線でした。しかし、韓国国内の航空ネットワークが非常に発達しているのは事実です。
韓国の面積と交通事情
韓国は南北の長さが約400キロメートル、東西の幅が約250キロメートルしかありません。この広さなら、一般的には国内移動に飛行機を使う必要はないと思えます。車なら数時間で国の多くの場所に行けるし、高速鉄道(KTX)を使えば、最も遠い地点同士でも2時間程度で移動できます。
一般的に、短距離移動に飛行機を使うメリットは少ないと考えられています。まず、空港までの移動や乗り換えが面倒。次に、飛行機は出発前後の整備や保安検査の手間がかかり、待ち時間も長く、遅延も頻繁に発生します。例えば、中国の深圳と厦門(約516キロメートル)間は、高速鉄道(最高時速250キロメートル)で3時間半かかりますが、それでも多くの人が飛行機ではなく鉄道を選びます。
それでは、なぜ韓国では国内線がこれほど発達しているのでしょうか?
1. 韓国の地形が複雑
韓国の地形は非常に険しく、山が多いのが特徴です。東側には太白山脈が南北に走り、黄海側には肋骨のように並ぶ山脈が存在します。また、漢江や洛東江などの大きな川が国内を縦横に流れています。このような地形のため、高速道路や鉄道の建設コストが非常に高くなるのです。
特に、韓国には多くの離島があります。最も大きな済州島は約1850平方キロメートルあり、中国の深圳市とほぼ同じ大きさです。済州島は本土から80〜90キロメートル離れており、橋や海底トンネルを建設するには莫大な費用がかかります。そのため、飛行機での移動が最も合理的な選択肢となります。現在、韓国本土の十数カ所の空港から済州島への便が運航されています。
この状況は台湾にも似ています。台湾の面積は韓国の約3分の1ですが、山岳地帯が多く、離島も点在しているため、国内線が発達しています。
2. 韓国の人口集中
韓国は世界でも有数の人口密度の高い国ですが、その分布は非常に偏っています。約5000万人の人口のうち、半数以上が首都圏(ソウル・仁川・京畿道)に集中しています。他に人口の多い都市としては釜山、大邱、大田などがあります。
人口が都市部に集中しているため、鉄道や高速道路、航空など複数の交通手段が必要とされます。一方で、地方の人口は少なく、広範囲にわたる鉄道や高速道路の整備はコストがかかるため、空港を設置して航空路線を充実させる方が効率的な場合もあります。
3. 国内航空の利便性
韓国の国内線は、手続きが簡単で、運賃が安く、便数も多いのが特徴です。一般的に、飛行機は高価で手続きが面倒なイメージがありますが、韓国の国内線はコストと時間の両面で効率的に運営されています。
例えば、ソウル(金浦空港)から釜山までのフライトはわずか1時間。KTXでも2時間半ほどですが、航空券が割安で、便数が多いため、飛行機を選ぶ人も少なくありません。
結論
韓国の国内線が発達している理由は、
- 地形が複雑で、鉄道や道路の整備コストが高い
- 人口が一部の都市に集中しているため、地方のインフラ整備が難しい
- 国内航空が手軽で安価に利用できる
といった要因によるものです。
特に、山がちで平地の少ない国では、鉄道や高速道路の建設が高コストになるため、短距離でも航空機が有利になる場合があります。アフリカや東南アジアの多くの国でも、高速鉄道を整備するより航空路線を充実させる方が現実的です。
中国では、杭州湾大橋や秦嶺、天山、横断山脈にトンネルを掘るなど、大規模な交通インフラを整備してきました。しかし、これは人類史上でも例のないほどの巨大プロジェクトであり、世界中の国が同じことをできるわけではありません。韓国のような国では、短距離でも航空機が重要な交通手段として活用されるのは当然のことなのです。
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